更新:2003年09月02日 (追記に308Xを追加)

名機 ミッチェル300が現代版として再来したのか?

MITCHELL®
300X Classic

私とミッチェル

実はこのリールを手に入れるまで、ミッチェルとは縁がありませんでした。

私は小学生の頃、国産リールで「ダイヤモンド・マイクロ7??」(大森製作所)というのを使っていたのですが、これがなぜか同時代の他の国産リールより高性能でまったく使いやすく、デザインも他の国産品とはえらく異なっておりました。

すぐあとでわかったのですが、このダイヤモンドシリーズは、ミッチェル300シリーズをコピーしたようなリールだったのです。実際のところ外見的にはかなり酷似した物でした。これは日本がまだ独自の高性能リールを作れないでいた時代の話。

本家のミッチェルはフランス製で、これがスピニングの量産品世界第一号ということを知るにつけ、いつかは本物を使ってみたいと思っておりました。

ところが国産品の日進月歩する早さは目を見はるものがあり、「いつかはミッチェル」という思いも薄らいでいたこのごろでした。

そのうち、あのミッチェル300シリーズは廃盤となり、新品では入手困難に。そうしてここに300シリーズが現代版として復活し300X Classiceシリーズを名乗ることになったわけですね。

私は人が使っていない物、評価の対象からこぼれている物に興味があり、300Xは価格も安いし、早速入手したという経緯です。今現在のMITCHELLはどうなったんだろう?ということです。

実はそれだけじゃなくて、他の高性能な国産リールは沢山売っているのですが、どれもこれもデザインが似たり寄ったりな感じで大枚はたいてまで買う気になれないということがありました。そして正直書けば、私がトップウォーターで使うスピニングのラインは12libが中心で、リール自体の性能に釣果や使いやすさが大きく左右されないだろうということもあります。それでバカに高い国産リールを使う気になれませんでした。

それから、決して元のの300シリーズを私が本当に知ったうえでこの300Xのインプレを書いているわけではないことを付け加えます。

むしろ300を知らずに国産リールに洗礼されたある男が、現代の300Xをどう思うかという記事としてお読みいただければさいわいです。




第一印象

ちょっと変わったボディデザインです。レトロっぽくあり、現代風でもあり。ローターやリールフット部の穴あきは好みの分かれるところでしょうか。左写真にあるボディ部300Xのプリントがある部分はベベルギヤの形にふくらんでおり、裏側も内部構造がわかる様なデザインでかなりコンパクトです。

ダイカストボディの表面は国産の高級機種ほどスムースな仕上がりではありません。しかし表面的なことは実質的な性能とは関係ないことだと私は思っています。

でまあ、ぱっと見は一歩まちがうとワゴンにある2〜3千円代クラスのリールに近いかも知れません。

ハンドルの構造

ハンドルはかつての300シリーズを踏襲しており、マシンカットの美しいアルミ製です。ちょっと細身できゃしゃな雰囲気が味を出しています。本体への脱着はローターを押さえて逆転させるだけではずれ、正転させて装着。一度付ければめったにはずすことはないですが至って便利、合理的です。左右の入れ替えもなんの道具もいりません。

ハンドルのノブは平たくで大きめ。これはけっこうツマミ心地が良いものです。

スプールにはちょっとエラーが

美しいマシンカットアルミ製とグラファイト製の物が1こずつ付いています。アルミ製の方はハンドルと同じ質感を持ち、全体的な精密っぽさが現れています。(本当に全体が精密かは別問題として)


スプールの画像1
左:アルミ   右:グラファイト

上の写真の通り、アルミ製とグラファイト製では芯の太さが異なり、ラインのキャパシティに差があります。それからわかりにくいですが、グラファイト製は2mmほど前後方向の幅が狭くつくられています。なぜそうしたのか不明ですが。(よって更にアルミよりもラインキャパが小さいはず)

それからちょっとエラーがあります。以下の二つの写真はそれぞれのスプールのラインキャパ表示部です。

 


スプールの画像2

ごらんの通り、ラインキャパの表示はどちらも同じなんです。そんなわきゃないですよね、芯の太さが違うのに。これは私のロットのみの間違いだろうか?ところが一方説明書にはちゃんと異なる数値が記入されています。

説明書表記:グラファイトのスプール--0.24mm/200m

ま、実際のところこの種の表記は別になくてもかまいません。他のリールでもほとんどこの種の表記がありますが、あくまで目安ですね。

スプールの脱着とドラッグ

上のスプールの写真でお気づきでしょうが、国内外を含めてアウトスプールのスピニングリールとしてはずいぶんとスプールの裾(すそ)が短いですよね。これにはちょっとした秘密があります。

上の写真はスプールをはずした本体です。ごらんの通り、なんとドラッグのノブが残ってます。すなわち、このリールのスプールの脱着はドラッグノブ(すなわちドラッグ設定値)と無関係。ドラッグとスプールが完全に別体なのです。すごいトリッキーです。

じゃあどうやってスプールが装着されているかと言えば、一種のカムロック式。スプールを本体に装着するときは、本体にストンと落として右に45度ほど回転させるだけ。取り外しはその逆です。その間にドラッグノブには一切触れることはありませんから、ドラッグの再調整は不要です。

標準状態でスプールが2個ついているというのは、どうやら積極的に交換して使えということのようにも思えます。せっかく脱着が簡単なのだから。

蛇足ながら、このスプールの構造は、実質的な糸巻き部とドラッグ機構が分割されていると表現すると最も近いでしょう。

さてドラッグそのものですが、実際のところ滑り出しは大変スムースで、微調整も可能です。ちょっとおしいのは、ノブがちょっと小さいこと。これはラインキャパを維持しながら脱着ワンタッチなスプールを実現するために仕方ないか。

グラファイトスプールの問題点

実は、グラファイトの方のスプールの仕上がりについてちょっと問題ありと思います。

その1)モールドの継ぎ目

成型時の接合面の多少のずれからか、スプールエッジ部(つば部分)に微妙な段差(ごく薄のバリ)がありました。使うラインが細くデリケート(例えば4lib以下など)だと、釣りの種類やタックルセットでは、ライン放出に関してこの微細な出っぱりが気になる人もいるでしょう。ま普通は4libなんて細いラインを使うときは300Xでなく308Xを使うのでしょうが。

この継ぎ目は、上の方のスプールの写真(スプールの画像1)でもかすかにわかります。ま、この価格帯ならこんなもんだとも思えます。

その2)エッジ部の仕上がり

これもいわゆるスプールのエッジ(つば部分)のことですが、ライン放出時にもっとも抵抗になるであろう部分の表面が梨地仕上げなんですね。または細かいサンドブラストふう。こう書いてわかりにくければ、上の方の写真でカーボンのスプールはツヤ消しふうでしょ。要するにスプールの表面がどこをとってもこのツヤ無し仕上げなんです。ライン放出に関係するエッジ部だけでもツルツルの仕上がりが欲しいものです。

これを書いている段階で実験はしてませんが、特にPEラインを使う人には抵抗になるかも知れません。

この仕上がりはちょっと疑問。それこそワゴンにあるフルカーボン980円リールの雰囲気も否定はできません(ちょっと言い過ぎか)。一応は300XシリーズのProモデルではスプールエッジがチタンメッキです。

 

平行巻き機構

スプールの上下端で巻いたラインがふくらまない、いわゆる「完全平行巻き」の仲間ですが、これをおもしろい仕組みで実現しています。下は300Xに添付される分解図です。


完全平行巻きのメカ

これを見てピンと来ますか?上の図で9182475とあるのは、まるでベイトリールのレベルワインダーですよね。なるほどこれなら完全平行巻きが実現するなと思える方はちょっとしたメカ通かも知れません。

このリールでは、ベイトリールのレベルワインダーの動きをそのままスプールの前後動きに持ってきてるということになります。

そして巻きごこちは?

どうもシャコシャコした感じがあります。アメリカで30〜40$前後の価格帯のリールだと思えばそんな物かと思えます。要するに値段相応な感じ。たぶん、使っているうちにアタリがっつけばマシにはなると思うのですが。

アタリがつけばちょうど良く、そしてその性能が維持される時間が長い。これって外国製の機械ものに多いですよね。

それからローターの重量がけっこうありそうです。これは全体の写真からもなんとなく予感できますよね。ギヤ比として6.2/1。そこそこなハイギヤであるせいも手伝ってかハンドルの空回しで言えば重く感じる方です。

リールで有名な方の解説にもありましたが、このローターはウエイトバランスが設計段階で計算されているのではなく、カウンターウエイトを後から装着してバランスを取っております。こりゃちょっと努力が必要なところ。

でもまあ、国産リールのようにベアリングの個数や重量の軽さで競争しようというつもりはない様子。そんなことよりも対価格比としての実用性を私は大切にしたいです。

ベールのリターン

このリールの特筆すべきはスプール装着メカ以上にスムースで軽いオートリターンのベールです。オートリターンとは、投げたあとにハンドルを回せばベールが勝手に元に戻る仕組みですね。

どんなスピニングリールでもとりあえずベールのオートリターン機構はあたりまえとなっていますが、現実にはやけに硬かったり、リターンしたときの衝撃や音が気になることがありませんか。その結果オートリターンを使わないで竿を持つ反対の手でベールを戻していませんか?少なくとも私が今までに使ってきた廉価(実売5000円程度)なリールではそうでした。

ところがこの300Xでは本当にハンドルを回すだけのオートリターンが実用となります。これは私がガキの頃に使ったMITCHELL300のコピー物、ダイヤモンドシリーズと同じ。 当時の本当のMITCELL300と比較できないのが悲しいですが。

最後に

さて、ざっとMITCHELL 300X Classic を見てきました。同価格帯の国産スピニングリールとくらべてトータルの実用性としては五分五分といったところでしょうか?

私がこのリールをお勧めするとすれば、「ちょっと変わった物を自分の目で確かめずにはいられない人」へ。そしてとにかく「MITCHELL が創った名機300の後継機種をその記念として」といった方々になるでしょうか?

そうでなければ同価格帯の国産リールをお勧めいたします。

私の場合、それが価格に見合うものならとことん実用機として使います。私にとってMITCHELL 300Xは実用機です。投げる、巻くの基本性能をその価格の中にきっちり持ったリールだと思います。オーバースペックなスピニングリールに数万円を投じることが平気な方は買わない方が良いと思います。ただの安物リールしにか見えないことでしょう。

追記:

300Xは、私が主とする使用目的、6フィートのトップウォーター用スピニングロッドとの組み合わあせにはちょっと大きいです。

重さからするとシマノ2500番台の廉価なリールと変わりませんが、スプール径で言うとそれを上回り、キャスト時にロッドの1番ガイドでライン放出を収束させるのがちょっと困難。ことによっては飛距離にも影響が出ているかも知れません。(これは使うラインが太いと影響は強くなるでしょう)

そこで実はより小型の308Xを入手しています。

308Xは265gの重量ということもあり6フィートクラスのロッドにはベストマッチです。シマノで言えば2000番台クラス。しかし感覚的には300Xと大きさの落差がありすぎ。欲を言えば両者の中間当たりの大きさが本来はベストなのかも知れません。ま、これは好みの問題に過ぎないのですが。

ここでもしかすると308Xがその実体よりも小さく見える気がするのですが、たぶん真っ黒なボディー色にその原因があることが想像されます。デザインとしては300Xをまんま縮小した感じです。308Xは小さい分、それだけでなぜか300Xよりも精密そうに見えてしまいます。

それから、308Xはサイドプレートをはずすとき、先にローターをはずしておく必要があります(ですよね?)。これだとメインギヤ部への給油にはちょっと面倒な手順となります。

 

参考HP:MITCHELLオフィシャルサイト

 



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